【114106→アイシテル】平成の最後に最新のWebRTCでポケベルをつくってみた【体験編】
こんにちは、ものづくり担当うこです。
ここ最近は次の元号が気になって、改元まで眠れません!
そんな平成の終了を追うように、平成初期に一世を風靡した「ポケベル」が、今年9月末で終了してしまうようですね。
東京テレメッセージ株式会社|ページャー(マジックメール)サービス終了のお知らせ
平成生まれの僕としては、聞いたことはあるけれど、使ったことはないポケベル。
これは無くなってしまう前に体験しなくては!
でも、もうポケベル本体は生産されておらず、新規契約もできません。
ならば…… 作ってしまいましょう!
ポケベルのしくみ
ガラケー世代、スマホ世代からすれば衝撃なのですが、 ポケベルは受信専用です。
基本は「無線呼び出し」という、小型の受信機に対し遠隔から合図を送る汎用的な仕組みであったものが発達し、報知局から受信専用の携帯機器のベルを鳴らすことができるようになりました。これがいわゆる「ポケベル」のはじまりです。その後、公衆電話から数字を送ったり、2つの数字の組み合わせで文字を表現する「2タッチ入力」で文字列を送ることができるようになったりして、今の30代〜40代が記憶に残すところのポケベルとなりました。
さて、仕組みはわかったものの、現代で手軽に扱える技術で、ハードウェア・ソフトウェア・通信方法をどのようにしたらうまく作れるでしょうか。
作ってみた
説明が複雑になりそうなので先に作りました(結論)
送信側である公衆電話も作りました。こちらはWeb上で動作します。
ポケベル側
ポケベル側は、
- レトロ感のあるディスプレイ
- 安っぽい音のするブザー
- 速いけど確実に届くかは無保証な通信プロトコル
の3点が課題でした。
まず最初に、ハードウェア上でLinuxが動作するなら開発も比較的やりやすいので、Raspberry Pi 3 B+ を製作のベースに選択しました。
次に、1.については、秋葉原でよく売られているのを見かける「16文字×2行」のディスプレイ(1580円)を使いました。しかしながら時代に即して、液晶ではなく有機ELであるところがちょっとナウいですね(死語)。
2.も、秋葉原でよく見る圧電ブザー(50円)を採用して音のチープ感を重視しました。
3.は、P2PでUDP伝送を行えばそれっぽくなりそうですが、そのままだと難しいので、NTTコミュニケーションズの提供するSkyWayを利用したWebRTC通信を採用することにしました。これについては後述します。
公衆電話側
公衆電話は、実機を使おうとすると設置場所を探さなければいけないのと、ハードウェアを作るのが大変そうだったので、Webで実装しました。
以下より誰でも利用することができます。
PayPhone for SkyWay PocketBell
往年のプッシュホンのDTMF音も再現しています。
これ単体でも2タッチ入力(ポケベル打ち)が体験できますので、ぜひ触ってみてください。
ポケベルがさわれそうな世代を探そう
ネットから情報をできるだけ収集してとりあえず作ってみたものの、同じように作っている事例がまず存在せず、かつてのポケベルをどれだけ再現できているのかまったく自信がありません。
そこで、実際にポケベルを所持していた世代の方に見ていただくべく、IoTLT大阪(Vol.10)でこのポケベルについて発表しました。
当日の参加者は50人前後。
ここで「実際にポケベルを使っていた方はどれぐらいいらっしゃいますか?」と聞いてみたところ……
写真幅に収まりきらなかったのですが、およそ5人〜10人の方に挙手いただきました!
IoTLTは勉強会としては年齢層が若めの部類ではないかと考えているのですが、1割ほどの方が実際にご使用されていたとのこと。今回はポケベル初出のため、できれば今後の勉強会でも調査していきたいと思っております!
発表の最後に、「実際に利用されていた方、触ってみたい方は懇親会で僕のところにお越しください」と申し上げたところ、多くの人が見に来てくださいました。 おっさんホイホイとはこのことか
「公衆電話のデザインが地味にリアル!」 と、ツボにはまっている方が多かったです。
「これ(公衆電話)触ってもいいんですか?」「どうぞどうぞ」と、実際に触っていただいたところ、「もう忘れたよ〜〜」と言いつつも「2タッチ入力」を軽々こなせた方が3名ほどいらっしゃいました。
いまだにブラインドでポケベル打てる(人生の)先輩方、おそるべしです……。
メッセージ、ちゃんと当時と同じように打てますね!! と絶賛いただけたので見てみると……
これはリア充しとったやつやな……
「アイシテル」は、2タッチ入力では「1112324493」と打ちますが、当時はド定番のメッセージだったそうです。文字が送れるようになる前の数字送信だけだったときには、語呂合わせで「114106」などとも送っていたんだとか。
その他、お話を伺ったところによると
- 公衆電話は時間課金なので、10円でメッセージを送るには、時間内に早打ちをする必要があった。
- いつも20円使ってたけど、10円で打てる人がいて、神のように崇められていた。
- 「88」と打てばハートの絵文字が出るのは当たり前(ドコモのポケベルがそうなっていたらしいです)。
などの思い出があったそうです。
今も「LINEの既読無視」のように、通信手段の特性に基づいた独特の「あるある」が存在しますが、それは四半世紀前でも変わらなかったんですねえ……。
みなさんもポケベル体験してみよう!
さてそんな手作りのポケベルですが、送信側の公衆電話はWebで実装されているため、 ブラウザで実際にポケベル打ちを試していただくことが可能です!
先ほど紹介させていただいたページにぜひアクセスしてみてください。
Google Chromeでの動作のみ確認しています。
PayPhone for SkyWay PocketBell
まずコイン投入口をクリックすると、液晶部分に「TEST」という表示が出ることを確認してください。これで、実際の受信端末がなくても、打ったメッセージをブラウザで確認することができるようになります。
次に、数字ボタンで「*2*2」と打ち込みます。これはフリーメッセージの入力を開始するコマンドのようなものです。これが打てたら、以下のページで紹介されているフリーワードの表を見ながら、数字2つずつ打ち込んでゆきます。
表の縦列数字が1つめ、横列数字が2つめです。例えば「うに」と入力するときは、まず「13」次に「52」のように2つずつ打ちます。
定番メッセージ「アイシテル」は「1112324493」と打つと表現することができます。
メッセージが打ち込めたら、最後に「##」と入力し、受話器置きの部分をクリックして「終話」すると、ポップアップでメッセージが表示されます。 うまく入力できたでしょうか?
公衆電話の通信について
このWeb公衆電話は、このままだと通信をしない「テストモード」で動作しますが、実際にはSkyWayを利用したWebRTC通信に対応しています。執筆時点で、WebとRaspberry Piのような組み込み機器をP2Pでリアルタイムに、かつ簡単に繋ぐことのできるサービスはこれがほぼ唯一です。しかもSkyWayのコミュニティ版は完全無料で使うことができます。
Webと組み込み機器を繋ぐのなら、以前まではWebSocketやMQTTを使うのが主でしたが、こちらは2者とも「サーバー対クライアント」の通信であり、バックエンドを準備するのが大変でした。
このSkyWayが組み込みに対応したWebRTCエンジン「WebRTC Gateway」を提供開始したことで、本来はWeb環境同士でしか成立しなかったWebRTC通信を、Raspberry Piのような低レベルのデバイスから直接的に接続させることが可能になりました。
この記事で作ったポケベルは、実際にこれで文字列をWeb公衆電話からRaspberry Pi製のポケベルへと送信しています。
ポケベル本体も、はんだづけなしで作れます
さて、ここまでモノが揃っているのなら、実際のハードウェアに文字列を送信してみたいな、と思われたことではないでしょうか。そこで、今回のポケベルは全てはんだづけを行っていますが、「Grove」と呼ばれる規格に対応したディスプレイやブザーを使うことで、一切はんだづけをせずに同じポケベルを作っていただける方法を準備しました!
その詳細は次回の記事に書かせていただきますので、ご興味を持たれたかたはぜひ当ブログをチェックしておいてくださいね!