#MakerFaireTokyo2016 にウェアラブルな電子楽器を出展してきました!
こんにちは! dotstudioのメイカーエンジニア・うこです。
去る8月6-7日の2日間にわたって開催された、国内最大級のモノづくりの祭典「Maker Faire Tokyo 2016」(以下MFT)に作品を出展してきました。
今回は個人メイカーとして制作したものを出しましたが、弊社エディターのうららがモデルとして一緒に参加してくれました。こちらの記事では、僕が出展した ウェアラブルなシンセサイザ「Cardiaction」 について紹介させていただきます。
ウェアラブルシンセサイザ「Cardiaction」の紹介
「Cardiaction」とは、「心臓の〜」を意味する接頭辞cardiacと、様々な「動き」を意味するactionを組み合わせた造語です。
着用することで着ている人の「心電図波形」をリアルタイムに読み取って音に変換し、服表面に描かれている鍵盤を押さえることで実際に演奏することができます。
また、ボタンの代わりに配置したツマミによって音作りを行うことができます。
出展者応募時は、僕自身がプロトタイプを着てデモを行ったため、出展者紹介ページではこのような写真が紹介されています。
制作段階において
- MFT本番は最も暑い時期であるため、半袖またはノースリーブであることが望ましい
- 着用モデルはカワイイ女の子のほうが圧倒的にウケがよい(超重要)
以上の2点から、弊社エディターのうらら着用モデルとして、ダブルボタンのベストに近い形態のウェアラブルシンセサイザを開発することになりました。
また応募時には「チーム名」を求められましたが、個人出展予定だったため10秒ほどで思いついた「u.kokolab」という安易な名義で出展することとなりました(笑)。
コンセプト
少し哲学的な話になりますので、この節は適宜読み飛ばしてください。
1.
古代より、ヒトの肉体を駆動させている中枢、もしくは「こころ」の核となる部分は 「心臓」 であると考えられてきました。(Wikipedia:こころ)
シンセサイザを主とするあらゆるすべての電子楽器は、 「音源」 を持っており、これはリアルタイムに生成されるか、メモリにあらかじめ書き込まれた状態にあります。電子楽器類はこの音源を元にして、指定された音色・音程・音量に変換できるモジュールを介して発音されることで楽器としての機能を果たしています。つまり、 「音源は電子楽器における心臓」 であるといえます。
以上2つの理由から、 「電子楽器における心臓をヒトの心臓に置き換える」 ことにより、機械である電子楽器とヒトが一体となることによって成立する新たな楽器という構想が生まれました。
2.
心電図は各人が固有に持っていながら電気的に取り出せる生体信号のひとつで、指紋と同様に「同じパターンをもつ人はいない」という理由からセキュリティにも使われた例があります。(関連リンク)
バイオリンのような、奏者が音の発生元である弦に触れるようなアコースティックな楽器では、奏者による微妙な音の表現の違いというものが存在します。しかしシンセサイザのような電子楽器では、同じモデルの機体で同じ音作りのパラメータさえ設定すれば、誰が弾いても基本的には同じ音が出ます。
以上2つの理由から、「電気的に取得可能で個々人にユニークである心電図」 を、「誰が演奏しても音に違いの出ない電子楽器」 に適用することで、誰が演奏しても全く異なった音の出る電子楽器 を作ることができれば、との考えから「Cardiaction」の制作へとつながりました。
デザイン
ベースとした衣服はダブルボタンの制服ベストで、ボタン部分はダブルではなく非対称のシングルとし、ボタンの代わりにツマミを配置しています。また、デザインの都合上レディースモデルながら右前となっています。
「Cardiaction」の文字を元にしたロゴモチーフを左側に配置し、「C」の文字を電源マークにして心臓の直上に位置させています。
残りの文字は波形の信号に似せた形をとり、特に「i」の文字を、心電図でよく見られる特徴的なQRS波(参考:心電図の基本的なみかた)と同様の形状としています。
技術仕様
今回の出展時点での仕様となり、今後アップデートしてゆく予定です。
- 同時発音数: 単音(モノフォニック)
- 鍵盤数: 13鍵
- ピッチベンド・オクターブシフト対応
- オシレーター: 3(標準四肢誘導心電図による第Ⅰ誘導・第Ⅱ誘導・第Ⅲ誘導の各波形からリアルタイムサンプリング)
- 音声合成方式: 筋電ノイズを含む心電図波形の減算合成とFM合成の併用
- フィルタ: バンドパスフィルタ*2(24dB/Oct固定、中央周波数・Q値可変)
- エンベローブ: なし
- LFO: なし
- ハードウェア(チップ): RaspberryPi3*1, Arduino Micro*2, AD8232単極誘導心電モニターモジュール*3
- ハードウェア(出力): USB給電ステレオスピーカー4W*1, NeopixelフルカラーLEDモジュール*40, LEDφ10赤黄緑LED*各1
- ハードウェア(入力): 圧力センサ*13, 可変抵抗*4, 接触位置センサ*1, スイッチ*4, 心電図計測用端子*4
- 服生地: T/Cツイル(ポリエステル65%,綿35%)
発音に直接的には関わらない部分として、Cardiactionロゴ部分の発光があります。
こちらは心拍1回に対してC文字部分から一番下までのLED点滅が2周期分光るようになっています。
また、心起電力ベクトル(参考:「心電図:心臓電気軸」)を検出し、3次元ベクトルの各パラメータをそれぞれRGBの値に対応させて色を変化させるように設計しています。この色がそのまま音色の違いにも関連しています。
制作課程
こちらはかなり長くなる予定ですので、別記事にして後ほどリンクを貼らせていただきたいと思います。
MFT当日に問い合わせていただいた皆様につきましては、少々お待ち頂ければ幸いです。
デモンストレーションの様子
当日2日間ともかなり忙しくあまり写真や動画を撮れなかったので、Twitterから以下にいくつか引用させていただきます。
u.kokolabさんのウェアラブルシンセサイザー。パフォーマンスが楽しそう。かわいい。#MakerFaireTokyo2016 pic.twitter.com/J84vnaDYN7
— 五味@NT能登キャンプ (@GomiHgy) 2016年8月7日
うらら うこ お疲れ!#mft2016 #makerfairetokyo2016 @ 東京ビッグサイト西ホール https://t.co/XQLaqqPnht
— のびすけ / sugawara (@n0bisuke) 2016年8月7日
間も無くu.kokolabさんのウェアラブルシンセサイザーの"Cardiaction"のデモが始まります。心電図を使ってメロディーを奏でています!
— カサネタリウム ホリ@ NT東京 8⁄7 (@kasanetarium) 2016年8月7日
D-02-12 ブース #MakerFaireTokyo2016 pic.twitter.com/0I6jDVoe32
ウェアラブルシンセめっちゃかわい〜 #MakerFaireTokyo2016 pic.twitter.com/yViNlFDh9M
— Kunimi Ishii in 一条 (@141923) 2016年8月7日
ウェアラブルシンセだ。太ももと腕で取ってる心電波形を音源にする。鍵盤で演奏する。ツマミも効く。実はかなりこったものである。 #MFT2016 pic.twitter.com/aibrwdmVp1
— 鷲谷憲樹 (@nwashy) 2016年8月6日
ウェアラブル・シンセサイザー『Cardiaction!』。服が鍵盤に、ってだけでなく、心電波形をオシレーターにして音を作っているらしい。#MakerFaireTokyo2016 https://t.co/Zl5TDxRfm1
— 布施雄一郎 (@MRYF1968) 2016年8月7日
#MakerFaireTokyo2016 で一番工口かった楽器。 pic.twitter.com/cGXqUuUNk9
— クランケ (@kranke_t) 2016年8月7日
楽しそうな顔してる笑#MFT2016 #MakerFaireTokyo2016https://t.co/OOi2SZ0nWJ
— うらら #MFT2016 (@uraranbon) 2016年8月7日
makerfaireでイケてるひとを発見@uraranbon @harmoniko #MFT2016 pic.twitter.com/Pk57XR43eo
— わみ@ものづくり (@wamisnet) 2016年8月7日
うこ氏 @harmoniko プロデュースの
— えむにわ(社会の底辺) (@m2wasabi) 2016年8月7日
LifeSynthJacket みたいなやつ
うらら氏 @uraranbon やばいかわいい pic.twitter.com/YKSzfoLl8N
まとめ
MFTへの出展は今回で2回目ですが、前回以上に余裕がなく、僕自身はあまり他の展示を見て回れなかったのが残念でした。
そんな中でも手伝って頂いた知り合いの方々や、シンセを着たうららと共に音を出しながら会場を歩いて出しゃばっていったにも関わらず快く対応してくださったメイカーの皆様、本当にありがとうございました。
メーカーフェア、昨年以上に余裕がなくってあまりほかのブースまわれなかったり実況とか告知もできなくって大変だった……あとこの楽器、他人に触られそうになるっていうのを全く想定してなくてかなり焦った(だってギター弾いてる人のそれを触る他人なんていないでしょ)
— うこ@MFT2016 (@harmoniko) 2016年8月7日
自分のブースに対する個人的な所感ですが……
MFTにおいては多くの子供たちも見に来られます。
前回、2015年に出した自身の作品「Vocaleaper」は、参加者が触りやすい形で展示をしてあり、また特に何も考えず手をかざすだけで音が鳴るというものでした。そのため、多くの子供たちに触っていただけたのですが、今回は展示の特性からもあまり子供が近寄りたいと思えるようなものでなかったと感じています。
個人的には、小さな世代にものづくりの楽しさをもっと知ってもらいたいと考えているため、それが実現できるミニマルなプロダクトを追加で用意しておけばよかったかな、と考えております。
しかし、コンセプトだけでなく見た目にもこだわりを入れたことで、先述のツイートのように多くの方々の目に留めていただくことができました。
自分の手で一から作り上げたモノを評価していただけるのは、何十回何百回となくやっていてもとても嬉しいものですね!
次回出展予定
ウェアラブルシンセサイザ「Cardiaction」は、次回は8月26日(金)にアスキーの主催による「IoT&H/W BIZ DAY 2 by ASCII STARTUP」に出展します。
こちらではメイカー・うこの所属元であるdotstudio株式会社として出展の予定です。なお現時点では販売可能なプロダクトではありませんが、希望者が万が一いらっしゃったら……?ご期待くださいませ。
ご来場のほどを一同お待ちしております!