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2018.04.30

パソコンやモバイルバッテリーに繋いで動かせるデバイスを作ろう!USB電子工作のすすめ#2 - 理論編

うこ

うこ道場
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こんにちは、ものづくり担当のうこ(@harmoniko)です。

みなさんは、電子工作をするときの電源はどこから取っていますか?

Arduinoをよく使われる方だと5V端子や3.3V端子から取っている場合が非常に多いですが、ではArduinoを使わない、ピュアな電子工作の場合だとどうしたらいいでしょうか?

第1回は、USB端子から給電可能なデバイスを作るための基礎知識を解説しました。今回は、電池/USB電源と機器の関係について解説していきたいと思います。

電源と機器の関係

改造を始める前に、電源と機器の関係について知っておきましょう。

まず基本として、

  1. 電子機器」の動作には「電流」が必要である(定格電流といいます)
  2. 電子機器」と「電源」で構成される回路には「抵抗値(負荷)」が存在する
  3. 抵抗値」がある回路に、「電子機器」が必要とする電流を流せるような「電圧」が必要である

以上の3点を覚えておいてください。

電源が電池の場合

ここでは、改造対象を「電池を利用する電子機器」としたときの電源(=電池)と機器の関係の説明とします。

1.png

電池は「定電圧電源」といい、電圧が一定で、電流が負荷によって変動する電源です(厳密には負荷によって電圧は低下します)。

機器が必要とする電流I(以下、定格電流I)は、上図において下記の式で表せます。

I = V/(R1+R2)

つまり、定格電流Iを機器側で定めるには機器の内部抵抗R2(=機器全体の負荷)を調整すればよく、R2が十分に調整できない場合は電池の個数を変えて電圧Vを大きくすることで、R2の調整幅を変えられます。

また、R2が限りなく0に近い(無負荷またはショートの)場合を考えると、R1は非常に小さい値ですが0にはならないため、電流Iは下記の式で表されます。

I = V/R1

これは乾電池から取り出すことのできる最大の電流です。このようなことは一時的には可能ですが、あまりに大きいために発熱・発火などが起こることがあるので、機器側を適切に設計する必要があります。

電源がUSBの場合

2.png

次にUSB電源を考えてみます。USB電源も同じく、5Vの「定電圧電源」ですが、出力可能な電流の上限値Imaxが明示的に定められています。このため、内部抵抗を直接考慮する必要はありません。

この電流値はモバイルバッテリーの裏面などで確認することができます。

このとき、機器が必要とする電流Iは、USB電源の電圧が5VなのでV = 5であり、下記の式で表すことができます。

I = 5/R2 (ただし I ≦ Imax)

USB電源の場合は、電圧が5Vと固定されているので、定格電流を定めるにはR2を調整するしかありません。ただしR2が小さかったとしても、流せる電流の最大値がImaxと決まっているため、大電流を流しすぎるといったことは起こりにくい回路となります。

電池を電源とする回路を、USB電源で駆動する場合

例として、通常の乾電池(1.5V)を2本必要とする機器(3V動作)と、4本必要とする機器(6V動作)を考えてみます。それぞれの機器の定格電流Iは以下のようになります。

この定格電流Iは、計算値より大きすぎると機器の破損の原因となり、小さすぎると機器が動作しない原因となりますが、ある程度幅がある場合が多いです。

次に、この2つの回路の定格電流を左辺、USB電源が出力可能な最大電流値を右辺として比較すると、以下のようになります。

答えは単純で、基本的に電圧5V以下で動作する電池駆動電子機器はUSB電源で動作可能となりますが、以下の電流に関する条件で動作要件が細かく変化します。

CASE1

USB電源は電流Imaxを上限とした定電圧電源のため、機器の定格電流の上限が電流Imaxより大きければ、動作電圧が5V以下の電池を電源とする機器にUSB電源を直接接続することが可能です。

具体的な例だと、乾電池3本(4.5V)を必要とする機器は、大抵はそのまま動作させることができます。しかし、乾電池2本(3V)以下だと定格オーバーとなることが多く、レギュレータという部品を使って電圧を降下させることで動作が可能となります。

CASE2

機器の定格電流の下限が電流Imaxより小さければ、動作電圧が5V以上の電池を電源とする機器にUSB電源を直接駆動させることが可能です。

そもそもR2が5V以上の入力で定格電流を流せるような設計となっていることが多いため、電源に十分な電流を流す能力があっても、電圧が低いと機器内部で定格電流を満たせずに動作ができないことが多いです。

CASE3

フェイルセーフ(定格を上回ると危険だが定格未満では安全上は問題がない)の観点から、多少定格を超えての動作は可能にしても、定格に満たなければ動作しなくても仕方がない、という設計になっていることがあります。このような機器は、機器の定格電流の上限が電流Imaxより大きい場合に動作可能です。

CASE4

ニッケル水素電池などの2次電池4本(1.2V*4 = 4.8V)で動作する機器は、5V以下であるためUSB電源でも利用可能ですが、大きめの電流を必要とする特性であるため、Imaxが低い(500mAなど)と動作しないことがあります。

CASE5

乾電池4本(6V)が必要な機器でも、実際には負荷によって電圧が低下し、5V程度で動作していることがあります。また、そのような電圧低下を見越して、電圧が低めでも動作するように設計されている機器もあります。このため、乾電池で5Vを超える電圧を必要とする機器であっても、USB電源で動作可能なものは多いです。


電子機器は、基本的な設計として供給電圧は一定のまま、動作状況によって内部抵抗(負荷)が変化するので必要な電流も変化するような仕組みとなっています。つまり、電源が供給可能な電流範囲内に機器の求める電流(定格電流)があれば動作可能なので、電圧が多少違っていても動作自体は可能であるということになります。逆の言い方をすると、電子機器はある一定電圧のもとで最適なパフォーマンスを発揮できるように設計されているということになります。

具体的にどんなものが改造できる??

ややこしく理論的なものを解説してしまいましたが、基本的には乾電池で動く電子機器で、必要な電池の個数が1〜4個のものであれば大抵動作します。

ただし、ライトのようにLEDだけを使う電子機器と、モーターを用いる扇風機のように大電流を必要とする電子機器とでは、元々想定されている電池の個数によってUSB電源で動作可能なものとそうでないものに分かれます。

また、USB電源をPCからとる際は、過電流などによる故障に十分注意して行ってください。

実際に僕がUSB化改造をしてみたもののうち、「LED・電球」を用いる電子機器と、電流が多く必要な「モーター・ヒーター」などを用いる電子機器とに分けて、動作が可能だったものを以下の表に示します。

○:USB(モバイルバッテリー)から直接給電可能
△:レギュレータを使用して電圧調整が必要
ー:未検証

必要電圧 / 駆動対象LED・電球モーター・ヒーター
1.5V(乾電池1本)
3.0V(乾電池2本)
4.5V(乾電池3本)
6.0V(乾電池4本)

乾電池4本を必要とする機器は正常に動作しない可能性が高く、動作してもパフォーマンスが低下(ライトが暗めであるなど)する場合がほとんどだと考えられます。

また、製品によって定格電流の値や幅が異なるため、すべての機器でこのように動作するという保証はありません。予めご了承ください。

さて、電源と機器の関係がわかったらいよいよ次回は改造していきます!

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